いぼ痔

いぼ痔(痔核)とは

肛門周辺にある静脈叢は毛細血管が集まってできているクッションのようなものです。排便時の強いいきみや長時間の同じ姿勢などで肛門に負担がかかると、静脈叢に血が溜まって腫れてしまいます。この腫れが“いぼ痔”です。肛門の皮膚と直腸粘膜は歯状線によって分けられており、内側の直腸近傍にできたいぼ痔は“内痔核”、外側の肛門部分にできたいぼ痔は“外痔核”と呼ばれます。症状や治療方法が違うので注意が必要です。

内痔核

直腸の粘膜下には痔動脈と呼ばれる3本の血管があり、内痔静脈叢に流入します。この静脈叢がうっ血して腫れると内痔核が形成されます。肛門を時計にみたてると腹側が12時・背側6時になりますが、内痔核は3時・7時・11時の3カ所に生じやすいです。

直腸粘膜には知覚神経がないため、その存在に気がつかないことが多いです。うっ血が進むと排便後の残便感・排便時の出血・痔核の脱出(脱肛)などの症状がでてきます。出血量が多いため、動揺して受診される患者さんも少なくありません。また貧血が悪化し輸血治療が必要になることもあります。内痔核は大きくなると炎症を起こしたり、脱出した痔核が戻らなくなることもあります。

Goligher分類

内痔核は進行度によって4段階に分けられています。進行度により治療方法が異なります。

Ⅰ度 ●排便時に出血が確認されます。
●肛門内に痔核が確認されますが、外への脱出はありません。
Ⅱ度 ●排便時に出血が確認されます。
●炎症が起きると痛みを伴います。
●排便によって痔核が一時的に脱出しますが、排便後に自然に戻ります。
Ⅲ度 ●排便時に出血が確認されます。
●炎症が起きると痛みを伴います。
●排便によって痔核が脱出し、指で戻す必要があります。
Ⅳ度 ●痔核が常に脱出した状態で、指でも戻せません。
●嵌頓痔核になると激痛を伴うため、迅速な治療が必要です。
嵌頓痔核 脱出した痔核が肛門括約筋で圧迫されることにより、大きな腫れと激痛が生じます。

血栓性外痔核

血栓性外痔核は肛門周辺の血流が悪化することで血栓が生じ、腫れていぼ状になったものです。最初は小さいですが、急激に肥大化することもあります。長時間のデスクワークや立ち仕事・排便時のいきみ・お酒の飲み過ぎなど肛門に負担がかかることで生じます。

血栓性外痔核の特徴

急激に大きくなり強い痛みを伴うこともあります。時に自然に破裂し、出血や“すいかの種”のような黒い凝血塊(血の塊)が出てくることもあります。血栓は自然に消失していきますが、サイズが大きい場合には完全に消失するまでに数ヶ月かかることもあります。

血栓性外痔核の治療

基本的には血栓が自然に消失するまで経過観察となります。鎮痛成分のある軟膏を塗ることで症状が緩和されます。サイズが大きい場合や痛みが強い場合には血栓摘出手術を行うこともあります。

血栓性外痔核ができてしまったら

血栓性外痔核は急激に腫れてしまうため、脱出した内痔核と間違えてしまうことがあります。元の場所に押し込もうとしても押し込めず、激しい痛みが生じる場合もあります。炎症を起こすこともあるため、早めに受診しましょう。
血栓性外痔核は肛門に負担をかけるような姿勢を長時間続けると悪化するため、こまめに横になったり、ドーナッツ状の座布団などを利用するのが良いでしょう。

再発の予防

血栓性外痔核が繰り返し再発してしまうのは、生活習慣が深く関係しています。長時間のデスクワークや立ち仕事をしている方は、肛門に負担がかかりやすいので、適度に腰を上げて体をほぐしましょう。また血流悪化もリスクになるため、毎日の入浴や足腰を冷やさないようにすることが有用です。

外痔核

歯状線より外側の肛門皮膚下の静脈叢がうっ血し、腫れてイボ状になったものが外痔核です。皮膚には知覚神経があるため痛みを伴い、特に急性静脈炎を合併すると激痛が起こります。血栓性外痔核とは違って血栓はありません。

いぼ痔の治療法

いぼ痔には内痔核・外痔核・血栓性外痔核の3種類があり、種類や進行度次第で治療方法が異なります。症状を解決するために手術治療が必要になることもあります。肛門はとてもデリケートで重要な役割を果たしているため、治療方針は患者様の症状やライフスタイルを考慮して決めていきます。当院では患者様としっかりコミュニケーションをとって最適な治療法を選んでいただけるよう心がけています。

結紮切除術(Ligation and Excision)

結紮は聞きなじみのない言葉ですが「縛る」という意味です。結紮切除術は痔動脈を縛り、痔本体を切除します。大きい内痔核や外痔核のどちらにも適応でき、根治性の高い手術方法です。ただ術後に強い痛みがあり、出血のリスクもあります。また複数の痔核がある場合、同時に複数切除すると肛門狭窄を起こす可能性もあります。そのため当院ではジオン注射やハイブリッド手術をお勧めしています。

ジオン注射 (ALTA療法)

ジオン注射 (ALTA療法)は有効成分である硫酸アルミニウムカリウムとタンニン酸を内痔核に直接注射し、内痔核を縮小させ、直腸粘膜に癒着・固定させて脱出を起こさないようにする治療です。切る手術と比べ痛みや出血は大幅に少ないですが、大きく脱出する内痔核は再発してしまうことがあります。ジオン注射は強力な硬化作用のあるお薬を注射するため、注射する深さや角度・量・位置などに正確なコントロールが必要であり、十分な肛門外科手術の経験を積んだ医師による施術が望まれます。

ハイブリッド手術(E on ALTA)

ハイブリッド手術は結紮切除術とジオン注射を組み合わせたものです。サイズが大きい痔核は手術で切除し、今後大きくなる可能性があるものにジオン注射を行うことで、お困りの症状を解決するとともに将来的な痔の再発を予防します。ジオン注射を併用することで、切除範囲を小さくでき術後の疼痛と出血を最小限することができます。

手術費用について

手術費用は、麻酔の有無、内痔核・外痔核、進行度、痔核の数や状態などによっても変わります。下記は健康保険適用時の金額の目安になります。詳しくは診察時にお問い合わせください。

治療方法 費用(3割負担の場合)
結紮切除術 約25,000円
ジオン注射 約30,000円
ジオン注射+結紮切除術 約35,000円
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