痔ろう(痔瘻)

痔ろう(あな痔)とは

痔ろうとは、肛門内部の直腸と肛門周囲の皮膚の間にトンネルができてしまう“あな痔”と言われる痔です。肛門のまわりに膿が溜まる“肛門周囲膿瘍”という病気が前段階として発症し、慢性化すると“痔ろう”になります。
痔ろうの初期症状は肛門周囲膿瘍による肛門周辺の痛み・腫れ・発熱などがあります。溜まった膿を外に出すために管状のトンネルができ、トンネルが外に貫通すれば膿は排出され痛みや腫れは一時的に楽になります。ただ肛門の内側の入口やトンネルが残されてしまうと、たびたび炎症を起こし膿が出る状態を繰り返し、肛門周囲の痒み・かぶれなどを起こすことがあります。

痔ろう(あな痔)の原因

通常は肛門陰窩に便が入ることはありませんが、下痢の勢いが強過ぎるなどの場合に便が入り込んでしまい、細菌感染することがあります。体力や免疫力が低下していると感染しやすいので注意が必要です。
また炎症性腸疾患であるクローン病が原因となることもあるため、小腸や大腸にも病変がないか大腸カメラで検査することが大切です。

痔ろうの治療

痔ろうはお薬で治癒することはないため、手術が必要になります。放置するとトンネルが蟻の巣のように広がり、肛門括約筋にまで影響が及ぶと肛門を締める機能が低下して便が漏れてしまうようになります。また10年以上放置すると癌化(痔ろう癌)することもあります。複雑化する前に治療し、再発予防に努めましょう。
痔ろうの手術は原発巣の切除と可能な限り肛門括約筋を傷つけないことが重要になります。痔ろうの方向や走行、深さなどを慎重に見極め、最適な治療法をご提案させて頂きます。当院では痔ろうの日帰り手術が可能ですが、トンネルが複雑な場合は提携している医療機関をご紹介させて頂きます。痔ろうの診断と手術は、経験と熟練の技術が求められますので、“肛門外科専門医”への受診を強くお勧めします。

瘻管切開開放術(Lay Open法)

痔ろうができる時に掘られたトンネルは瘻管(ろうかん)と呼ばれます。瘻管切開開放術は、瘻管を切り開いて開放する治療で、縫合は不要です。再発率は約1~2%と低く、根治性が非常に高いもので、入院も必要ありません。切除しても肛門機能に支障が起きない肛門後方部の浅い痔ろうが治療対象です。

括約筋温存術(くり抜き法)

瘻管をくり抜き、肛門括約筋を温存する手術です。瘻管切開開放術に比べると再発の可能性は高くなりますが、おしりの傷も小さく肛門機能を保持することができます。おしりの状態に応じて侵襲が少なく再発しにくい方法での手術を行います。日帰り手術が可能です。

瘻管切開開放術+括約筋温存術(くり抜き法)

瘻管の状態次第では、外側はくり抜き法、括約筋部分は瘻管切開開放術を実施し、肛門を寄せて縫合するハイブリッド手術も可能です。おしりの状態に応じて侵襲が少なく再発しにくい方法での手術を行います。

シートン法

瘻管は、化膿の始まりである歯状線内部の原発口から、膿を排出する皮膚出口の二次口まで繋がっています。シートン法は、原発口から二次口までの穴に専用の輪ゴムを通し、少しずつ縛っていく方法です。瘻管や肛門括約筋は縛ることによって徐々に切開されていき、切開された部分から治癒が進んでいきます。
初日の手術は日帰りで可能ですが、2~3週間に一度は締め直すために通院が必要です。治療期間の目安は数か月から半年程度で、肛門括約筋への負担は最小限に抑えられます。ただし、締め直す際に多少痛みがあり、施術後も違和感が数日続きます。

手術費用について

痔ろうの進行度や位置、麻酔の有無などによって手術費用が変わります。下記は健康保険適用時の金額の目安です。詳しくは診察時にお問い合わせください。

治療方法 費用(3割負担の場合)
痔ろう 約20,000円~約35,000円
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